「なぜ、シニアで海外日本人学校を希望したのですか。」「なぜ、校長先生をやられた方がここで担任をやろうとしたのですか。」と、多くの方に聞かれました。

答えは、「人生は冒険と挑戦だ。」「学級担任がやりたい。」です。

私は、若いころから海外日本人学校派遣教諭を希望していました。しかし、挑戦できたのはたった1回です。それは、まだ私が30歳台の頃です。

自分の息子や娘の日本語の発達に支障になってはいけない、高校受験の支障になってはいけない、と考えると複数子どものいる私にとってタイミングは限られていました。

また、挑戦した当時、荒れた中学校に在籍し、生徒指導の中心的役割を担っていました。その学校から逃げ出したいと思っているようで後ろめたさを感じていました。ですから、その1回で合格できなかった私は、日本人学校をあきらめていました。

そんな私が、定年退職が間近になった時に頭に浮かんだのが海外日本人学校シニア派遣教諭です。若いころにやってみたいと思ったことをもう一度挑戦してみることもよいことだと思いました。そんな折に、2歳年上の兄が急死しました。兄も38年間教職について、やっと退職して1年も経たないうちに、初孫の顔を見た一週間後に亡くなりました。私は、今なら、自分のわがままも許されるのではないかと思いました。

「人生は冒険と挑戦だ。」はNHK朝ドラ「マッサン」でエリーさんが言った言葉です。ウイスキーづくりに情熱をかけるマッサン(ニッカウイスキー創業者がモデル)を好きになったエリーさんは、故郷のイギリスを捨てて日本についていきます。日本でのウイスキーづくりがうまくいかないマッサンに対してエリーさんは、「人生は冒険と挑戦だ。」という言葉で励まします。

私は指導主事、小中学校の教頭・校長合わせて13年間管理職を務めました。管理職は、教職経験が必要で判断力を求められるとてもやりがいのある仕事です。反面、孤独な立場です。学校でのすべての責任を背負うことになりますので、職員に相談できないことで一人悩むことも多くありました。自分を消耗する仕事でもあります。学級担任は自分と毎日接する子どもたちがいます。助け合える職員集団がいます。何より、感情を共有できるということはうれしいことです。日々成長する子どもたちを目の前に、どうしたらもっと成長できるかの夢を語り合える同僚がいて、子どもたちから驚きと感動をもらうことができる学級担任はなんてすばらしい仕事でしょうか。

シニア以外の派遣教諭の先生は、日本に戻ったら必ず(・・)私がたどったような「いばらの道」が待っています。ぜひ、今を楽しんで仕事をしましょうね。毎日が冒険と挑戦です。

最後に、インター・オフィス含めてシドニー日本人国際学校の管理職の先生方はみな素晴らしい人ばかりです。「孤独な管理職に愛を!」皆さん、経験者からのお願いです。

 

6年1組(2021年3月卒業)

担任 山田 斉